赤い文化住宅の初子

dankai-2005nen2008-05-25



この数ヶ月で見たDVDの一つが「赤い文化住宅の初子」、タナダユキという人が監督だ。タナダユキ(敬称略)は映画「タカダワタル的」を撮った人、湯布院記録映画際で監督挨拶付のその映画を観たこともあり、その名前が頭に残っていて、レンタルビデオ店に寄ったとき、その名前を目にして借りて観たのだ。原作は松田洋子原作のコミックらしい。絶望的な哀しみの中にある初子(主人公中学3年)が持つささやかな希望と、家族のぬくもり、、と書いてあった。うらんで、ぐれてもよさそうなのに、こつこつと生きていく主人公、同級生との初な恋愛が懐かしさを誘う、、タナダユキはまだ20代だと記憶しているけど内容、雰囲気はほとんど昭和3、40年代そのもの、稀有な感性を持った監督。
 もう一本は「ボルベール(スペイン語で帰郷)」。「アバウトマイマザー」、「トークツウハー」などを撮ったスペインの監督の作品だ。この監督、アルモバドルは常識や正義では計れないところの人の心と生き様を切り捨てず暖かく見つめ、生命の賛歌を描く。「まあいい、何があっても、とにかく生きよう」と思わせる。

本も何冊か読んだが、コミックは「カレカノ」(大分合同新聞に書評が載っていた)、小説は「あなたがパラダイス」。この小説はジュリー(沢田研二)の長年のフアンが「彼」に支えられ、一緒に力強く生きていく、そんなおばさん達のお話、ほとんど実話。
今でも全国ツァーができる大物歌手であるジュリーは昔の懐かしさでファンをひっぱり、演技力を生かしてたまに芝居をやっている人と思っていた。けど昔の懐かしさで引っ張っている訳でなく、年代ごとに彼自身の言葉で詩を綴り、歌を歌い、同時代をファンと共に過ごしていることがわかった。
その小説はオムニバス形式になっていて、又一話であるかのように登場人物が重なったり、読んでいるうちに楽しくなって、一途なファンであることの幸せ感が伝わってきて、そんな人が俺もほしくなったのだ。俺はうらやましさを覚えながら、何故俺には愛する「人」がいないのだろうと考えた。