親が老いても俺が老いるはずがない!!

親が老いても俺が老いる訳がない!!           

今、母親は体験入所ということで、有料老人ホームで寝泊りしている。
タバコでの火事、外出時の交通事故、きちんと3度の食事がとれているかなどいろいろ考えると心配で試しにと入所してもらった。又、同じ世代の話し相手ができればいい、緊急時にすぐ駆けつけてくれる人がそばにいれば安心とも思う。

 俺自身、学生時代や勤めていた頃の寮の共同生活の楽しさも記憶にあったし、最近増えている民間の有料老人ホーム(高齢者向け賃貸し住宅)は雰囲気も明るく、今は姨捨てといった暗いイメージもないので、試すことにしたのだ。
入所するにはお金がもちろんいるわけで、高いのはきりがなく、縁もない。中程度で大体15,6万円(家賃、食費、共益費で電気、水道など自己消費は別である)である。最初に払う入居一時金が200万前後。
 あちこち見てまわったけど、それより安い民間の施設は何故か寝たきりや、車椅子の人ばかりで病院のような感じだった。世話をしてあげているという雰囲気だ。そこに住むのは入所者本人の意思というより入所を勧めた人の事情や施設の都合を感じてしまった。

 俺は母親が寝たきりになったのでホームへという意味ではなく、元気なうちに共同生活を楽しんでほしい、又実家に近く、すぐ戻れて縁が切れない近さであることを条件にした。
 母親は倹約家で、自分の家で生活するとつつましく暮らすので年金の範囲で暮らし余ったお金を貯金する。けれどホームに入ると年金では全然足りず、彼女のささやかな貯金は目減りの一途だ。かといって身内の俺は稼ぎが微々たるものだ。お金が減るというのは彼女にとっては恐怖なのだ。それは高齢者でないとわからないと思うが稼げる未来がないものにとって貯金は生存の保証なのだ。目減りするというのはゆくゆく死ねと言うことでもある。
俺は「あなたが少々長生きしても足りるし、残す必要はないし自分のために使えばいい」と今は言っている。

で、今体験入所中だが、実際住んでみるとホテル住まいみたいなもので、洗濯、掃除をやってくれて、歯医者、医者も定期的に来てくれて、食事は上げ膳据え膳、本人はやることがなくて暇なのだ。自由に散歩に出てもいいのだが彼女は歩行が少し安定しないので職員がついてくる、それが申し訳なくて外出するのを遠慮する。
毎日彼女から定期報告の電話が俺の携帯にあるのだが、先日はホームの事務所の封筒貼りを手伝って、役に立てたと声が弾んでいた。
今彼女は俺と週に2日実家に戻り、外出やNPONOディサービスをマイペースでこなす。