熟年

 以前はTVと言えばNHKのニュースを1日30分くらい見るのがせいぜいだったが、連れあいに先立たれた母親と仕事をやめて同居するようになって、多少時間の余裕がでたせいか、見る機会が増えた。
 増えるとつい意識的に番組欄でチェックするようになった。それで見始めたのが「熟年離婚」だ。
 50数年生きてきた男が社会的立場をはずれた時、その先をどうとらえて、どう生きていくかは、やはり同世代としては興味はあるのだ。

 先回、主役(渡哲也)の娘の彼氏(アマチュアのミュージッシャン)が娘の身内(姉夫婦)にうざったそうに口を利き、又、「俺は別に親なんかに会いたくねえんだよ、デビューが決まって、準備に忙しいんだよ」と言っていた。
 姉の婿は「人の心がわからない奴に歌は歌えない」と返していたが、その正義ぶりがなんだか陳腐に聞こえたのだ。
 ちなみに娘は糟糠の妻みたいで、彼との子をお腹にかかえながら、懸命にチケットを売り歩いたり、彼に尽くしているのだが。

 娘の肩を持ちこんな男と別れてしまえと叫びつつ見ていたのだが、振り返れば、30数年前、俺は当時付き合っていた彼女に「親と付き合っている訳じゃない、おまえと付き合っているのだ、親なんかには会いたくない、家族帝国主義なんか壊せ、自立せよ」などと言っていた俺を思い出したのだ。
 ちょっとショックで、しかし今は俺は親の目線で見てしまうことを否定はしない、けど立たざるを得ない寂しさを感じてしまったのだ。